朝露は無く、なんだか蒸し暑い朝。夕立日和だな~なんて思いながら足早に坂道を登って行く。
すっかり明るく成った頃に、調整池に着く。
チョックストーン滝 |
渓谷美を見ながら歩き、景色に目を奪われて大切なものを見落とした。気が付けば、取入れ口まで来ていた。はて?新道の入り口は何処だったっけ。
タブレットのGPSで確認するが、ニゴマン図はうその表記をしている。結局自分の目が頼り。きょろきょろしながら15分程のタイムロスで新道に入る。
大窪沢の渡渉点はスノーブリッジだった |
まだ道の手入れに入っていないらしく、結構草が伸びて不明瞭な個所も有る。おまけに急な斜面は踏ん張り所も無く、一歩一歩を大切に踏みしめないと登って行けない。お陰で息も切れないし汗も出ない。朝日を浴びてなかなか捗らない行程に嫌気がさす。ここにロープが欲しいな~ とか 倒木が邪魔だな~ とか、勝手な事を思いながらうんざりし始めた頃、巻き道は下り道に成り、渡渉点へ降りて行く。
残雪の涼しさで生き返り、対岸の尾根への取り付き点を確認して一休みする。
昨年は、この行程の逆を回った。嫌なことは覚えている。急な悪い道を苦労して降りた。今日はその道を登る。
年に何人の岳人がこの道を歩くのだろう?。踏みしめられていない道は、脚の置き場が無い。ズルリと滑る。ロープにしがみ付く様に、這いつくばる様に獣の姿で登って行く。獣ならひょいひょいと駆け上がるのだろうが、人間様は獣の真似は出来ない。じれったく成る様な早さで、にじり上がる。
良い塩梅に焼けつく日差しは木々に遮られ、涼やかな沢風が背中をなでる。苦労している姿を見ていらっしゃる方が居られる。折れそうな心のままでは可哀想にと背中を押してくれる。
急な斜面はいつしか緩やかに成り、橅や岳樺の林から、灌木の中の道になる。仕事がしやすく成ったのか、この先は脚元の草を刈り払って頂いた様で、明瞭な道を歩く事が出来る。
苦労も吹っ飛ぶ優しい景色 |
灌木帯も抜け出るとたおやかな斜面が広がる。草を刈って頂いた仕事の後が、ラインを引いて伸びている。緩やかなペースに成れてしまった脚は早くは動かない。一歩一歩踏みしめたペースそのままで割引岳山頂に着く。登り始めて4時間37分。清水からなら登って降りている時間だ。同じ場所に立つにも、道が違えば時間も違う。見て来た景色も踏みしめて来た土も違う。いつもより少し誇らしげに景色を見渡しながらおにぎりを頬張る。今日は漬物も買って来た。甘い水に飽き飽きした味覚には丁度良い塩加減。
お決まりの スマイル |
のんびりしか歩けなかった脚は疲労感は無い。牛ヶ岳に向かってグングン歩いて行く。人気のお山なので、山頂付近は早い時間でも、気の早い岳人が行き来している。
適当に挨拶を交わしながら、牛ヶ岳へ。
オイラが来るのを待ち構えて、「シャッターを押してくれませんか」と言う人が居る。少し立ち話をする。井戸尾根を登って来て、ヌクビ沢を降りると言う。「止めて置いた方が良い」とお節介なアドバイスをする。幾ら一般ルートとして山歩きの地図に載っていても沢を下るのはセオリーに反する。「再度訪れた時に沢を登って尾根を下ったらどうですか?」と、やんわりと否定して納得して貰う。
「それでは」と別れて、旧道を下る。
きょろきょろ見渡して思うのは、斜面が雪をまとった姿。ラインを引きたい斜面がそこには広がる。
ライン引き放題だな |
こちら側の道も刈り払って有り安心して歩いて行ける。
それ程汗はかいていないが、身体は水を欲する。沢で冷たい水をたらふく飲み。欲をかき、空いた水筒にも満タンに詰めて満足する。
急に多く成って来た雲にいなな予感が湧き、脚を早める。でも、此方の道も早めようにも早められない。歩かれていない道はふかふかで脚には優しいがスピードは上げられない。
それに、視界が開けた尾根道からは目を引く景色が次々と現れて、脚を鈍らせる。仕舞には、ザックを下ろして地図と地形を見比べて納得させられる始末で、捗らない。
ほっと一息 |
一位や五葉松の根が絡んだ細い尾根を降りて行く。足場が有るから急な斜面でも何とか降りていけるが、やはりロープなり手がかりが欲しい個所が有る。そんな所は、笹を纏めて掴んだり、枝を掴んだりして恐る恐る降りる。
沢音が近づき、渡渉点に降り立つ。水は緩やかに流れ、陽の光をいっぱいに受けた開けた河原だ。ここで顔を洗ったり、行動食を腹に納めたり。
緊張させられっ放し |
さて、今日の核心部の嫌らしい岩場の高巻き。登り返す高度もそうだが、足を滑らせたらサヨウナラ的な所の連続。岩質自体は靴底の摩擦が効くのだが、バランスを崩せばお終いである。ここも結構ロープの張り方が大雑把で、この位な所大丈夫でしょ 的な・・・。ここは山慣れした(整備された道ばかり歩いていちゃだめだが)場数を踏んだ肝っ玉が据わった人でなくちゃホイホイとは行けないだろう。オイラもへっぴり腰でソロリと進んで行く。
エルキャピタンみたいやな~ |
足元に、発電所の取入れ口が見えて一安心。後は、渓谷美を眺めながらの遊歩道歩き。
鼻歌交じりに歩いて行くと、救助隊の面々が作業を終えて休んで居った。新道の草刈りをしてきたみたい。明日からは明瞭な道を歩ける。
天竺の里からは車道を駆け下りてスタート地点に帰る。26km 約10時間。
アスファルトのゆらゆらした熱気に、思わず自販機で〆のコーラ。
8 件のコメント:
とんばさんが手こずるルートならかなり厳しいルートのようですね。
絶景でとても興味があります。
チャンスがあったらご同行お願いします。
しかし裏と表じゃ山の顔が違いますねぇ。
凄い絶景!
こんにちは、とんぼさん。
やはりキャンプ場手前の階段からのスタートだったのですね。
新道分岐は「ワリビキ」と書かれたプレートが寝そべっていただけだったと記憶しています。
注意しないと通り過ぎてしまうのもうなずけますね。
まだ大窪沢には雪が残っているんですね(@_@)
私が歩いたときは、急坂を下りてホッとしたここの出合いで日暮れを迎えたことを思い出します。
ここまでの道も尾根を通るのではなくトラバース気味なんですよね。
ブログにはあっさりと割引岳までを書かれていますがここも急坂でヤセ尾根、下りるには先が見えないほど。
おっしゃるように最低限のロープやクサリ、沢屋さんたちの下山路みたいな感じに思えました。
私も近場で登山道のない足尾山塊を歩くことが多いので草木を掴みながらズルズルと滑る斜面を歩くのにも尻込みしないで済みました。
割引岳~牛ヶ岳までの道がいかに歩きやすく天国のようだった気さえしたのを覚えています。
やはり核心部は楽園のような下り舟~取水口のゴルジュの高巻きですね。
怖さを感じる余裕さえないまま四足で必死だったです(笑)
こうして読んでいると再び歩きたくなってしまうのは何でしょうね?
暑さでダラケている最近ですが、タイトなコースを歩きたくなりましたよ(^^)
暇なときにでもどうぞ!
http://blogs.yahoo.co.jp/denki0310/12824925.html
また遊びに来ますので今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
番長へ
このルートの困難さは、やはり新道 旧道ともにゴルジュ帯を高巻く為に付けられた巻き道に有ると思われます。新道は渡渉点まで結構な距離と標高のアルバイトが有るし、旧道は危険な岩場の巻き道が有ります。体力と意志の無い者は去れ!と言わんばかりの道なので、踏み込める者は限られてしまうでしょう。しかし、そこにはそこに立った者だけが見る事が出来る絶景が有ります。急ぐに急げない難路ですが、行く価値は有ると思います。この山域随一の難路です。
でんさん
コメントありがとうございます。
今回は登り出しは鉄管路脇の道を登り、帰りは天竺の里の車道を走って降りて来ましたが、おとなしく行きと同じに鉄管路脇の道を降りて来た方が早かったかなと思いました。車で上まで上がれれば時間は短縮できるのでしょうが、ゲートを勝手に開けて入って良いものやら?と思いいつも下から歩きます。
辛い困難な道ですが、差し引いて余り有る達成感と景観のご褒美が有りますから、また歩きたくなるのでしょう。辛い事はしばらくすると忘れてしまって、返って強い印象として残り、またそこへ足を運ばせてしまうのでないでしょうか?。楽をして登った山の印象は強くは残らない様に感じます。
是非又いらしてください。
最近自分は、殆ど地元の山にしか足を向けないので、体力が続く限り何度も登った山と向き合って行こうと思います。毎回何かしら新たな発見が有ります。
また覗きに来てください。自分に向けた備忘録的な拙い文章ですが、宜しくお願いします。
初めまして六日町在住の早川と申します。先日裏巻の登山道整備をしていた中の1人です。
今回救助隊に同行して初めて登山道整備をしてみましたが大変な作業でした。
そこで会った人の話を知り合いにしたところ、とんばさんの事を教えてもらい
ブログを拝見させていただきました。
私も地元の山を好み、冬は山ボードも少しやってます。
中ノ岳のブログを読みあの山で滑る人がいる事を知り大変驚きました。
近いうちにこちらからアポをとりますので色々と山の話を聞かせて下さい。
宜しくお願いします。
hayakawaさん
コメントありがとうございます。
登山道整備ご苦労様でした。本当に大変な作業ですね。整備をして下さっている方には感謝をしなければ成らないと常々思っています。
そうですか。山ボードをなさっているのですね。地元の山を好んで滑る事はいろいろ利点が有りまして、まあ他の山域に遠征をかけて見知らぬ斜面を滑る事も面白いのですが、やはり一年中観察して興味を持った斜面に跡を残す事もやりがいの有る行動だと思っています。自分の滑るフィールドなんてごく一般的な斜面ですが、その中でも、自分で地図を見て観察して跡を残して来た斜面も結構有ります。もっと凄い事をやってらっしゃる方は沢山いらっしゃいます。自分の話など聞いても何の得にはなりませんよ(笑)。
お返事ありがとうございます。
確かに上には上がいると言う言葉があるように凄い事をやっている人は沢山いますね。
私自身もう年も年なので余り無理は出来ないですが凄い事をやった話を聞かせてもらうだけでも
楽しいですし、まだ少し自分の可能性にもチャレンジしたい気持ちもあります。
機会がありましたら一度飲みながらお話したいです^^
次のレポートも楽しみにしています。
hayakawaさん
機会がありましたらよろしくです。
コメントを投稿